DTP以前の印刷業界
印刷業界は、DTPが普及するまでと、DTPが普及してからで、大きくその業態を変えて来ました。
DTPとは、「デスク・トップ・パブリッシング」の略称で、パソコンの画面で、見たままレイアウトをし、印刷するという技術です。
今では、個人でもDTPができるようになっていますし、ごくごく当たり前の話なんですが、DTPが普及しだしたのは、わずか20年くらい前のこと。
それまでは、印刷業界は手作業に占める割合が非常に大きかったのです。
印刷という技術は、1450年にグーテンベルクが活版印刷を発明してから、急速に世界に広がりました。
それから長らくは、凸版印刷が主流でした。版の凹凸にインキを付けて印刷する、いわばハンコとおなじ原理ですね。
その後、平版印刷(オフセット印刷)が登場し、印刷品質は飛躍的に向上しました。
DTP以前の印刷業界ですが、
- 写植
- 版下
- 製版
- 印刷
と、工程ごとに分かれていました。
写植は、文字を入力してそれを印画紙に出力する、文字専門の工程です。
文字詰めなど、細かなノウハウが必要でした。組版の技術が求められれました。
版下は、デザインのラフスケッチを元に、大きな用紙に、写植で作った印画紙を糊で貼ったり、写真の位置やトリミングの指定をしたり、
色の指定をする工程です。
今から考えると、すごいことをしていたんだなと思いますが、例えば色の指定は、実際の色で確認できないわけですから、カラーチャートを見ながら、色の掛け合わせを考えて、実際の色を想定する仕事でした。
ここに、デザイナーや版下屋の腕がものをいう世界があったのです。
製版は、版下を撮影し、フィルムを作り、それを元にアルミ版に焼き付ける仕事です。(刷版)
写真をレタッチするのも、製版の仕事でした。
印刷は、現在とあまりかわりなく、刷版によって作成されたアルミ版(平版)を、印刷機にかけ、印刷するという工程です。
このように、様々な工程に分かれていたのですが、工程ごとに専門会社が存在し、それぞれの工程で利益を乗せることができたために、印刷業界は比較的安定して利益を得ることが出来る業態だったのです。
また、職人技が求められるので、一般の人から見て、非常に敷居が高く、容易に真似ができませんでした。
一般の人から見て、印刷工程はブラックボックスであったのです。
高度成長期とともに、印刷業界も大きく成長しました。顧客が儲かれば、当然、それに付随する印刷物も増えたので、優良な顧客を見つければ、半自動的に仕事が舞い込む、いい時代だったと言えます。
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