印刷業界の未来について
不況産業といわれるまでになってしまった印刷業界ですが、その中で飛躍的に業績を伸ばしている会社があります。事業分野と言ってもいいと思いますが、そのキーワードは「WEB」です。
そう、Webを利用した「印刷通販」です。印刷物を、WEBで販売するというものですが、これの革命的なのは、「価格をオープンにした」ことです。
今までの印刷業界は、「定価」というものがなく、工程別に算出される価格計算は、各社でバラバラでしたし、顧客の要望を聞いて、1つ1つ作り上げていく印刷物は、価格表を作ることが難しい状態でした。
これは、企画料、デザイン料、データ作成料という、物質的な原価がなく、ほとんどが人件費で計算される工程を含んでいたためでした。
ところが、Webでの印刷通販は、価格表を明示することにより、顧客への分かりやすさと注文のしやすさを実したのです。
これを可能にした理由は、基本的に印刷用データの作成は顧客側が行い、印刷会社は単純に「印刷」という工程に特化したからに他ありません。
印刷工程は、工場生産と同じ感覚で原価が分かりやすく、そのため価格表を明示することが可能になったのです。
Webの印刷通販が急伸する前段階では、「印刷営業は、提案型営業でなければならない」とか「ソリューション型の提案・コンサルティング能力を身につけよ」とか言われていました。
しかし、今まで御用聞き型の営業しかしてこなかった印刷業界の営業マンに、いきなり「提案しろ」とか「コンサルしろ」と言われても、土台無理な話です。
そのため、印刷業界の「提案型営業」は、一部を除いて失敗に終わったのです。
そうしている間に、「印刷会社の仕事は、単に紙に刷ること」「デザインは、お客様に作ってもらう」と極端な、割り切りをしたWeb通販が頭角を現したのです。
そして、複数のお客様のデータを、付け合わせることにより、大幅なコストダウンを図りました。
営業も必要ありませんし、高度なデザインができるデザイナーを雇う必要もありません。
工程はシンプルに単純化、マニュアル化され、徹底的な合理化で、驚くほどの低価格で印刷を提供できるようになったのです。
Webの印刷通販成功の要因は、Webを使ったからというだけではなく、上記のように「印刷するだけ」という分野に特化したからに他ありません。
デザイナーは、より安い料金で印刷発注できるようになりました。
印刷通販の顧客には、一般企業の他に、印刷会社やデザイナーからの発注も多いのです。
しかし、Web印刷通販も、雨後の筍のごとく、競合会社が出てきています。
非常に競合が激しくなってきています。
また、差別化が難しくもなってきています。「印刷」に特化したということは、デザインなどの付加価値を付けにくくなったということでもあるので、熾烈な価格競争の時代に突入してきているのです。
ただ、市場のパイとして、Web印刷通販は非常な勢いで伸びていますので、しばらくは、この勢いは止まることがないでしょう。
その中で、いかに生き残るか。印刷業界の未来は、Web印刷通販が握っているのかもしれません。