不況産業への転落
DTPによって、デザイン単価が下がり、ブラックボックス化されてきた各工程の利益が取れなくなりました。
また、その頃と歩を合わすように、バブルが崩壊し、不景気の世の中になりました。
不景気になると、企業は広告費を減らしたり、固定費を削減します。
そのあおりを受けて、印刷物の需要が減少していきました。
印刷業は、装置産業とも言え、印刷機とオペレーターがいれば成り立つ業界でもあり、すぐに多数の会社が倒産するわけではありません。
つまり、印刷会社の数はそんなに変わらないのに、仕事がないので、当然、価格競争に突入します。
印刷機を回すことだけを目的にしてしまい、単価を下げてでも仕事を取りたいという印刷会社が増えたために、急激に印刷料金も下がって来ました。
しかし、刷っても刷っても儲からないとう悪循環に突入したのです。
印刷業界は、非常に特異です。大日本印刷、凸版印刷という、たった2つの大企業が君臨し、印刷業界の90%以上は、中小・零細企業です。
それらの中小・零細企業は、大日本や凸版の下請けで印刷している所も多いのですが、不景気になると当然、値下げや、仕事そのものがなくなります。
印刷会社の最大の顧客は、実は印刷会社で、お互いに仕事を発注しあうという業界構造なのですが、1社の業績が悪くなると、他の会社にも悪影響を及ぼします。
また、地域密着で印刷をしているところがほとんどなので、地方経済が疲弊すると、とたんに仕事がなくなります。
官公庁に依存している所も多いのですが、平成の大合併によって、市町村の数が減り、仕事がなくなるか、減った市町村での競合が激化して来ました。
入札制度も、指名入札から、公開一般入札になり、ますます競合が激化しています。
またさらに、企業の広告が、チラシなどからWEBへ移行しつつ有ることも問題点の一つです。
印刷という、紙にインクを載せて刷るというだけの会社では、新しい時代に対応することが非常に困難になっているのです。
このように、DTPによる効率化がもたらした単価ダウン、不況による需要の鈍化、それにともなう競合の激化。
そして、IT革命による紙需要の低下、などが、印刷業界が構造的に抱える問題なのです。